2010年4月17日土曜日

2010年2月5~15日インド旅行記 (1)

インド旅行は三度目なのだが、初めて行くような緊張感に襲われていた。

なぜなら、一人で行くのが初めてだったからだ。

今までの二回とも、会社の同僚(同一人物)と一緒だった。と言うと聞こえはいいが、すべて彼に任せっきりだったのだ。何日目にどこに行って何を見るかの計画段階から、それはもう、何から何まで。

実は、今回もそいつと一緒に行くつもりだった。しかし、仕事の都合で行けなくなったとかで、2週間ほど前に、いきなり俺は行けないなんて言い出したのだ。いきなりだぜ。

ワックMCを見つけたときのR.A.P(radioaktiveprojeqt)くらい「そりゃあないよ」な気分だったが、ここで旅行を取りやめるわけにはいかない。

「そりゃあないよ」ビデオクリップ。本旅行記のBGMにどうぞ)

旅行会社にキャンセル料を35000円くらい払わないといけない。その同僚は、私のキャンセル代金も肩代わりしてくれるほどの器の大きさは持ち合わせていないから、俺も行くのを止めるとなったら35000円をどぶに捨てることになる。

一人だと心配だから僕もやめる、なんて弱気なことを言っている場合ではないのだ。むしろ、貴重な経験をできるまたとないチャンスである。そう自分に言い聞かせる。

とはいえ、不安は拭いきれない。

今回はよりによって11日間という長期間である。日本の会社員とは思えない休暇の取り方だ。

気が重い。インドがどういう場所なのか知らない部署の同僚が、インドに行くというと「いいなあ」と羨んでくる。「仕事なんかよりずっときついですよ。インドがどういうところか知ってるんですか(キリッ」とカウンターアタックを仕掛けることは忘れない私。

今までの人生で、まともな一人旅など国内含めしたことがない。唯一あるとすれば、仕事でアメリカ出張に一人で行ったくらいだ。でも出張なんて向こうに着きさえすれば、あとはホテルとオフィスの往復。自分で何かを計画して実行するという過程はほとんど発生しない。

あれよこれよで時間が過ぎてしまい、荷物の準備はもちろん旅行計画すらまともに立てられない。

直前になって、何とか大まかな旅程を作ることができた。今回の飛行機は、デリーIN、デリーOUT。旅行の流れとしては、デリー→アムリトサル→ダラムシャーラー(マクロード・ガンジ)→デリー→脱出という感じにしたい。

何でそれらの町を選んだかは、旅行前日にツイッターに投稿したインド旅行の目標11箇条を見てもらえると、分かると思う。

(2010年2月4日twitter投稿より抜粋開始)
インド旅行の目標 1)デリーにあるタンドリー・チキン発祥の店(!!)でタンドリー・チキンを喰らう。
posted at 20:13:57

インド旅行の目標 2)映画を観る。
posted at 20:14:56

インド旅行の目標 3)インド内で飛行機を使わずに移動する(バス、鉄道)。
posted at 20:15:39

インド旅行の目標 4)インド人に「うさちゃんピース」のポーズを伝授する。
posted at 20:17:12

インド旅行の目標 5)インド人に、モーニング娘。(現役メンバー)で誰が一番かわいいかをアンケート調査する。
posted at 20:18:35

インド旅行の目標 6)インド・パキスタンの国境(インド側ではアムリトサルという町)に行って、クロージング・セレモニー(印パ両側が国旗を降ろす儀式、毎日やっているらしい)を観る。
posted at 20:21:53

インド旅行の目標 7)まあとにかくうまいものを食う。北インド料理もそうだし、チベット料理も。
posted at 20:23:47

インド旅行の目標 8)スパイスを買い溜めしてくる。
posted at 20:25:11

インド旅行の目標 9)極力笑顔で。カリカリしない。
posted at 20:28:26

インド旅行の目標 10)まあ他にもやりたいことはあるけど、全体として楽しんで、大きなトラブルもないまま家に帰ってくる、に尽きるな。
posted at 20:30:26

インド旅行の目標 10で終了したつもりだったが11)ダラムシャーラーでヒマラヤをこの目で見てみたい。
posted at 20:37:53

「この目」って言っても、メガネかけないとちゃんと見えないけど。
posted at 20:43:51
(抜粋終了)

他はいいとして、その4と5は何なんだよ。今自分で見ても首をかしげる。そして当日(2月5日)、飛行機に乗るまでのツイッター投稿。

(抜粋開始)
@karasi_gj 別に特別貧しいところを選んで訪れているわけでもないが(普通に『歩き方』に載っている町や名所)、「裕福なインド」というものが一体どこにあるのか、想像し難い。個別の人間では、そこそこ裕福な方なんだろうなという人とは会ったけど。
posted at 06:20:36

そろそろ出発する
posted at 06:39:20

1130発フライト。空港カウンターに930集合。スカイライナー使えば余裕だが普通電車だとちょい遅れるかも?しかし自分の金でスカイライナーに乗りたくないw
posted at 07:16:03

パスモに慣れるといちいち切符を買うことがとても煩雑になった。
posted at 07:19:11

電車の乗客たちに目力がない。
posted at 07:25:22

そういや「くりぃむ何とか」を深夜にやっていた頃、眼力と書き「めぢから」と思わせて実は「がんりき」だったというフェイント技を堀越のりがやっていたな。
posted at 07:29:17

普通電車だと922成田空港着だな。航空会社カウンターに930に間に合わなくもないかも? でもここにきてスカイライナーの快適さも捨てがたい。
posted at 07:47:13

結局スカイライナー。ストレスの少ない時間を買った。 http://twitpic.com/11ebmc
posted at 08:05:38

カメラ機能付の携帯的なギャジェットを用いて世界中でツイッターにアクセスできれば、その場で旅行記が書けるね。やっている人いるだろうけど。
posted at 08:10:46

とりあえず、コンデジは二台持ってきたけどiPod忘れたorz
posted at 08:14:19

日経流通新聞でも読むか。
posted at 08:16:36

チェックイン済ませた。
posted at 09:19:45

飯をどうしようか悩み中。機内食は嫌いなのでいつも何か買って持ち込んでる。
posted at 09:38:55

このスニーカー、前回のインドでも履いて行ったが幾人ものインド人(空港職員とか)から「俺のと交換してくれ」と言われた。 http://twitpic.com/11ets5
posted at 09:51:26

朝はお腹に優しくお粥と海老ワンタンのモーニングセット。昼は京樽でシースーを買って機内で食べようかと。 http://twitpic.com/11ev06
posted at 09:58:30

チケットが非常に安かったのでJALを使う。往復で70Kだった。 http://twitpic.com/11ezsu
posted at 10:25:54

次はインドから書き込めることを願いつつ、ぼちぼち携帯の電源を切る。それにしても一生モノの経験だよな。11日間インド一人旅なんて。
posted at 10:41:53
(抜粋終了)

飛行機は、引くくらい座席が狭かった。「本当にここに何時間も座るのかよ」という感じだった。しかも3席並んでる真ん中だよ。しかも右側にいる人、身体でかいよ。しかもバンダナ巻いててちょっと怖そうだよ。

「失礼します」とその強面に声をかけて自分の席に座る。

すると、意外に愛想がよかった。「狭いですよねー! びっくりした」から始まって、雑談に花が咲く。

彼はダージリン出身のチベット人で、15歳のときに来日。添乗員の仕事を2年間やって、この度退職して故郷に戻るという。名前をジグメさんという。

彼との雑談から得た情報をいくつか列挙しておく。

・インドではチップは基本的に払わなくてよい。高級レストランでも多くて10ルピー出しておけばよい。私が「前南インドに行ったとき、チップを払わずにレストランからでていこうとしたらチップを出せって要求してくるから、1ルピーだけ払って店を出たことがありますよw」というと、笑って「それでもいいねw」と言ってくれた。

・ダラムシャーラーはそこまで寒くない。ヒマラヤ山脈は雪が積もっているから当然寒いが、それを望むトリウンドは服を着てれば大丈夫。

・ジグメさんはダラムシャーラーには2、3回しか行ったことがない(※ダラムシャーラーは亡命チベット政府の拠点で、ダライ・ラマの公邸もある)。便利さはないが、のんびりしていて、チベット料理がうまい。

・チベットは国がないからパスポートがない。その代わりインド政府発行の"letter of identification"という冊子でどこでも行ける。入出国のスタンプを押すページが3枚しかない。(日本のパスポートでは21枚あった。)


(チベット人にとってのパスポート)


(富士山らしい。)

左側には韓国人の大学生、女性。初めてのインドで、一人で、期間が一ヶ月で、予算が予備含め米ドルでいうと500ドル程度という強者。

JALだったのだが、サービスはやや冷たい印象。コストを削ってるのが伝わってくる。新聞の配布をやめたのはもちろん、驚いたのが、コーラを頼むとでかいペット・ボトルからコップに一杯分注いで出してくれることだ。普通、缶ごとくれるよね。おかげで、炭酸は抜け気味だったよ。会社があの状況だから、働いてる側も大変なんだろうな。

デリー着。午後6時40分くらい。

シゲタ・トラベルにホテルまでの送迎を頼んである。(最初は自力で空港から街に出るつもりだったが、出発前日に急に不安になり、急遽ネットで送迎を依頼。迅速に返事をくれて、大変助かった。)

地球の歩き方を見ても、シゲタ・トラベルに頼むのが空港から街に出る一番安心な方法と書いてあるよ。ある程度慣れてきたら自力でも行けると思うけど、時間も遅いし、長旅の疲れはあなどれないから、多少お金を出して安心を買った感じだね。

両替。デリーの空港には二つ両替できる銀行が並んでる。トーマス・クックと、State Bank of India。前者の方がレートが少しよかったのでそっちに並んでいると、途中で閉店しやがった。State Bank of Indiaで、5万円を両替。一応、10万円持ってきてたんだけど、そんなに使わないような気がして。一度ルピーにしちゃうと円に戻すのは面倒なのよ。建前上、ルピーはインドから持ち出し禁止らしいし、日本でルピーは両替できないからね、たぶん。

シゲタ・トラベル関係者を発見。既に日本人が集まっている。女二人と、浮かれ気味のアホっぽい男の三人組。もう片方は、一人で来ている男。前者とはあまり話したくなかったので、軽くサツアイ(あいさつの業界用語。どこの業界で使うんだよ)だけ済ませて、単独旅行者の男同士で話しながらシゲタ・トラベルの関係者とともに車に向かう。

その男(田中さん)は、大阪出身の営業職。最近転職。新会社に勤めるまでの束の間の休暇を利用して来たという。初めてのインド。チケットはマイルでまかなったらしい。すごくいい感じの人だったよ。

時間は9時くらいになっていたのだが、どうしてもその夜は地元の(文字通り)リアルなインド料理屋でノー・ギミックな飯を悔いたかった。田中さんを誘うと、快く一緒に来てくれた。

シゲタ・トラベルで、空港で両替したお金を細かめに崩してもらい、お互いのホテルへ。

地球の歩き方を見てるとグリーン・チリという店がよさげ。店の外から、シゲタ・トラベルのラジェンダさんとさっきの日本人三人組が店内で談笑しているのが見える。彼らと合流はせず、二階席に腰を落ち着かせる。この時点で午後9時半くらい。

結論から言うとね、もう最高。あれを凌駕するインド料理は、今まで食べたことがない。チキンカレーは生姜が効いてて、絶品。バター・ナンとバター・ガーリック・ナンはもちもちしてて、タンドリー・チキンも肉が歯ごたえバリバリ。文句のつけようがない。唯一、チキン・サラダはまずかった。インドでうまいサラダを食ったことがない。

あと、キングフィッシャーのビール。サイズが日本のインド料理屋で出すのよりでかい。

料金は、二人で625ルピー。店員がチップを欲しがっているから、10ルピー渡したら嬉しそうにしてたよ。

ほろ酔い気分でレストランを出る。すると、乞食が寄ってきて、哀れみたっぷりの表情で、口元で手を動かして何か言ってくる。英語で話してくれといっても通じない。「金をくれ」もしくは「飯をくれ」と言っているようだ。ポケットに忍ばせていた2ルピーくらいのコインを渡すが、それでは引き下がらない。どうやら、「そのレストランで飯を食えるくらいの金をくれ」と言っているようだ。「ごめんね、でもこれ以上はあげられないんだ」と言うと、向こうは「分かったよ、ありがとう」って感じで去って行った。

田中さんと別れ、健闘と無事を祈る。

スラムのような道を歩行し、ホテルに戻る。それにしても部屋きたねえよ。シーツに何かシミがついてるし。午後11時くらいに就寝。


(初日のホテル)

(1/11日終了。続く)